知に関する話

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田中ビネー知能検査V(ファイブ)

田中ビネー知能検査の最新改訂版。 現代の子どもの発達に即した尺度に改め、検査用具をより使いやすいものに一新されています。

田中ビネー知能検査V(ファイブ)
田中ビネー知能検査V(ファイブ)

記録用紙は、子どもの様子を観察しやすいように観察記録欄を充実させ、見開き頁で検査結果が一望できるアセスメントシートを採用、1歳級の問題もとけない子どもへのケアの参考となる「発達チェック」を追加。

特別な支援が必要な子の発達診断と適切な指導のための参考資料になり、成人級の問題は因子構造的な知能の診断ができるように、問題を再構成されています。

「結晶性領域」「流動性領域」「記憶領域」「論理推理領域」の領域別DIQ、総合DIQも算出し、プロフィール等で各人の特徴もわかります。

ビネー法の知能観

ビネー法は、通常「一般知能」を測定しているといわれ、知能を各因子に分かれた個々別々の能力の寄せ集めと考えるのではなく、1つの総合体として捉えていて、言い換えるならば、記憶力、弁別力、推理力などさまざまな能力の基礎となる精神機能が存在し、それが一般知能であると考えられています。

ビネーは、人が何かの問題に直面したとき、共通に作用する力が働くのではないかと考えていたらしく、共通する能力とは、方向性、目的性、自己批判性であり、知能とは、この3側面を持った心的能力であると考えられる。

  1. 方 向 性:一定の方向をとり持続しようとするので、何らかの問題が生じたときにそれに向かって、集中する能力。
  2. 目 的 性:目的を達成するために働くもので、途中で気が変わったり、諦めて投げ出したりせずに、最後まで問題に取り組み続ける能力。
  3. 自己批判性:方向性や目的性をクリアしたうえで、自己の反応結果について適切に自己批判するもので、客観的な評価能力。

これらの3要素は、どの検査問題を解くときにもかかわってくるものである。「図形模写」「短文・話の記憶」「不合理」「ひもとおし」「類推問題」など、すべての課題に共通して働くものである。

田中ビネー法

日本人向けの検査法

本検査は、そのまま外国の検査法を翻訳したものではない。日本人の文化やパーソナリティ特性、生活様式に即した問題内容を採用した。図版なども実生活との乖離がなく、なじみ深いものがあるから被検査者はスムーズに検査に溶け込むことができる。このことは検査への抵抗を軽減するだけでなく、本来の被検査者の能力を十分に発揮させるために重要な要件でもある。

年齢尺度の利点

ビネーは知能検査を作成するにあたって、各年齢の子どもたちを観察し、年齢による発達がみられる問題を探した。その結果、年齢に応じて分けられた問題構成となり、「年齢尺度」が誕生した。ある子どもがどのくらい発達しているのかを知る手がかりに、他の子どもとの相対的な比較は重要な指標となる。ビネー法もウエクスラー法も、他の知能検査法のほとんどがこれを知能指数知能指数を導入したのはターマンである。)という数値で示す。 しかし、何をどのようにケアすればよいのかを考えるとき、年齢尺度で構成されているビネー法は、できなかった問題、あるいはできた問題の年齢的な基準が示される。子どもをケアするうえで年齢的な指標があるとイメージはつかみやすい。しかも各問題が実生活に即した内容であるから、具体的にどのような学習(トレーニング)をしたらよいのか、どのように対処(トリートメント)したらよいのかを示唆してくれる。

分析的な視点とトータルな視点

一般知能を測定しているという特徴から、被検査者の基礎的な能力を把握することにビネー法は優れている。しかしながら、田中ビネー知能検査に精通しており、なおかつ心理学的な見地も持ち合わせたテスターが実施するならば、分析的な診断も可能である。分析的な視点とトータルな視点の両方を持ち合わせている。 例えば、文章を記憶することが苦手な子どものケースでは、その原因が記憶力にあるのか、聴覚的な刺激の取り入れにあるのか、もっと他にあるのかなどを子どもの反応を分析したり、取り組み方を観察することで推測できる。原因への洞察がなされれば、指導法にも反映させることができる。 田中ビネー法は、このように分析的な視点とトータルな視点の両方を持ち合わせている。各問題の意味するところ、子どもの反応への理解があれば、子どもの潜在能力を見いだすことが可能になる。